図書館で新刊を借りて読んだが、「ジャーナリズム崩壊」。なんとも恐ろしいタイトルである。
ジャーナリズムが、内側から自浄作用を失い、崩壊しているのではないかというのは、ずいぶん前から思っていた事だけれど。この本はその辺の事情をわかりやすく見せてくれていると思う。
NHKに呼び出されて、田中真紀子氏の報道に関して、スクープ情報の出所が著者であるにもかかわらず、他社、他紙でコピーされつづけ、回り回ってきた情報で、著者本人が、「あまり人のまねをするような物書きはしないように」とたしなめられた下りがある。
これは、大きな新聞社が、週刊誌の情報を取り上げるときの、不正なコピーを不正としない手法について、述べた下りだが、この辺は、本を買うなり、借りるなりして読まれる事をお薦めします。
で、「あまり人のまねをするな」という不当な警告に対して、「ここで反論したら大人げない。」といった思考に著者が走った事は理解出来なかったし、著者の考え方に共鳴出来ないところも多々あった。
しかし、これまで財力や権力で押さえつけていた無理な秩序が、あちこちで崩壊している事は、こういった、現場の第一線で物を書いている人の本を読むと、具体的な枠組みを、これまで以上に明確にしながら裏付けていく事が出来るし、海外のジャーナリストの置かれている環境と比べて、日本のジャーナリストと呼ばれる人達の職場環境はずいぶん違う事を教えられる。
もうジャーナリストなどと言えない実体が十分に理解出来るから...だから怖い。この本の実体通りなら、日本の新聞・テレビ記者たちが世界中で笑われているというのは想像に難くない。
日本にしかない「記者クラブ」制度。同じカンニング記事を見合う「メモ合わせ」。担当政治家の出世が、そのまま政治部記者の出世。などなど。なんじゃそりゃ。そんな姿勢の報道を押しつけられた日にゃ、わしら庶民はたまらんわ。
記事・作品を発表するたび永田町が震撼する気鋭のジャーナリストと言う事で、著者はネットでも紹介されているけど、一方、民主党主催のゴルフコンペに、他のマスコミ関係者とともに1泊招待された事が判明し、会費、宿泊費等自腹であると言う事を、のちに明かしたというあたりは気になるところ。ジャーナリストとして情報収集のために切り込んだとも考えられますけどね。
情報紙「ストレイ・ドッグ」(山岡俊介取材メモ)より
民主党のマスコミ接待リスト-上杉隆氏の釈明
まあ、ご一読される価値のある一冊と申せましょう。すべての報道は色眼鏡をかけてみるようにしましょうね。
出版社: 幻冬舎新書
ISBN:9784344980884
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