■怖いけど凄かった「メスと口紅」(1968年)■
人間の記憶が、時とともに強烈に増幅される。あるいは、美しく装飾されると言うことは、本当に多々あるものだと、あらたのは思う。
マイティジャックの「メスと口紅」を、本放映で見たときの衝撃は、相当なものであったことは間違いないと思うし、その衝撃が種となって、自分の中に何かが芽生え、自ら時間をかけて創作した記憶の中に、確実に自分は居すわっていると思うし。
それが、この「メスと口紅」の冒頭で登場する、サイポーグが抹殺される直前の絵。どう考えても、アップで書きすぎだが、自分の中では、これが本放映における自分の頭の中での正しい記憶。
40年を経て、デジタルリマスターで実際にそのシーンを見ても、改造が失敗に終わった哀れな改造人間は、海から岸壁にはい上がるシーンで、それほど顔がアップになっていないことに、改めて驚く。幼いころ受けた衝撃で、心の中に刻んだ映像は、あきらかに実映像に勝る。
さてさて、そのように幼い心に強く残るはずの、巷の話。特にメディアやネットという媒体では、ごく一部だと僕は願うけど、人間にとって確かに糧になるはずの、美しい記憶や、正しい行い、また逆に悲しい記憶、恐怖の報酬について、打算や計算、断罪や弁護によって、定量よりも軽く考え、見積もる傾向があるのではないか?
たとえば、あらたのは、「核戦争」というキーワードについて、その恐怖を庶民に充分すぎるほど味あわせた、秋(とき)の為政者には、それなりの賠償をお願いしたいし、ノストラダムスの大予言で、さんざあおり立てた、本書きやプロデューサー、仕掛け人たちにも、充分な賠償を願いたい人間なのである。
その恐怖は、当時、小さかった僕たちには「救いのようない恐怖」だった。もちろん、ノストラダムスで世間が騒がしい頃には、すでに自分も大人だし、何かの非科学的な占いに頼ることはなかった。また、核戦争云々という時代に、シェルターやマスクを買った覚えもない。まあ、買うお金もなかった訳だけど、科学的見地に支えられた思いも少しはあるし、特に、金銭的な損害は被っていない訳だけれど。
あえて言うが、その救いようのない恐怖に対して、唯一、夢という救いを与えてくれたのが、円谷の親父さんであったと思うのだ。たとえそれが、荒唐無稽なサイエンス・フィクションという作品世界の中であったとしても。。。ああ、あの時と同じゴジラはもう2度と現れないか・・・
実のところ、あらたのは、手塚治虫には、そのような尊敬の念を抱いていない。手塚治虫氏は、サンダーマスクや、W3に見られるような、芸術的な終演で、たかだか10歳の当時の私たちに「高度な問題を提起したまま放置しすぎた」と感じる。これは現代の日本アニメ界が、そのままそれを受け継いでいるかのように映る。
では、なぜ、円谷の親父さんを、あらたのが、特別に見るかというと、それは、ライブ特撮という肉弾戦だからこそ残せたテーマの中に、今でも親父さんが居座っているから。と思うからだ。アニメ・漫画と、当時のライブアクション特撮では、勧善懲悪ですら、その説得力ではアニメの方が格下だった。いや、今でもそうだ。
もしも、宇宙戦艦ヤマトを、当時、特撮でやったら、どんな作品になったろうと考えてみたら面白い。ヒットはしなかったかもしれない。だが後世への残り方や、シリーズの扱い方も変わっただろう。円谷英二という人は、いまでも特撮プールの中で、子供への夢への手がかりを求め続けて操演を続けているに違いない。
その汗や血潮が、手塚氏にないとは言わない。だけど、その後の30年なりの月日が、後世に残した後輩の作品群を見るにつけ、やはり、ライブアクション特撮とアニメーションの方向性の違いが、そこに見いだせるのではないかと考える。
ちなみに、微妙だが、仮面ライダーや、戦隊シリーズは、あらたのはアニメと分類している。東映作品は東映作品だから。強いて言えばキカイダーが別格か。。。皮肉なことに、アニメの隆盛に比して、特撮の世界は、いまだ冬である。アニメは都会、特撮は田園風景。と言っては、簡単に考え過ぎだろうか・・・
現代の状況がそのまま、子供に対して提供できる可能性なり、夢の限定的な提供になっているようにも思う。「子供に夢を与えたい。」というのが、傲慢、偽善という声が聞こえてきそうな世の中だが、やはり子供に夢を与えたい。
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メスと口紅
題名からしてアダルトな雰囲気があるなと思ってました。
初放映を見たのを覚えています。私も最初に出てきたあの改造された顔が怖かった。
それにシリンダーに入っていた、すでに改造されているという(ダミーでしたが)包帯で巻かれたサイボーグも怖かった。
サイボーグ009は爽やかなサイボーグでしたが、こっちのはリアルな?生々しいサイボーグです。
当時の少年雑誌か何かに「サイボーグ特集」みたいな記事を見ましたが、水中でも活動できるように上半身に人口エラを付けた人間とかが載ってました。
未来になると簡単に改造できてしまうんだろうか? もし自分がこんな姿になったらどんな超人になったとしても絶対に嫌だ!!
一度改造されたら元の生身の人間に戻ることはできないんじゃないか?
などと思ってましたので、こんなリアルな改造人間を見るのは恐怖でした。
しかしこの話に出てくるマッドサイエンティストには憧れてしまうのは何故だったのか??(^_^;)自分も実際に動物を使って陸の動物に魚のエラを付けたらどうなるかやってみたいと妄想してました。
その後は悪の道に入らず平凡な人生を送ってました(^。^)
早速のコメント、ありがとうございます。悪のマッドサイエンティストに成らなくて良かったですね(^_^)。
なんか結構、マイティジャックファンの皆さんは、ITとかプラント、化学関連のエンジニアになってる人が多かったりするのでは。
このページには、あらたのとして、例の怖いサイボーグが登場するドラマ冒頭のショットを、イラストで書こうと思いつつ、最初の書き込みから、もう5ヶ月が経過してしまってますね。。そろそろ、またペンを握らねばと思っています。
私も何かの少年誌を友だちの家で読み、改造された人間の想像図を見て、怖ッ!と思った記憶があります。帰りは夕方、まだ日があっても怖かった。このサイトのどっかに書いてたと思いますが、うちの親は厳しくて、サンデー、マガジン系は友だちの家で読んでました。
家ではもっぱら「子供の科学」。これだけは親が毎号買ってくれました。懐かしい思い出です。